【寿司の謎 1】鮓・鮨・寿司…。この使い分けって何?お寿司の歴史に迫る!
この連載では、皆さんが大好きなお寿司について、好きなのに実は知らなかったこととか、知っていたらもっとおいしくお寿司をいただけるようになるような知識を、できるだけ簡単にわかりやすくご説明できたらと思っています。
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お寿司大好きな皆さん、こんにちは。
記念すべき第1回は、お寿司の起源について、語源や歴史、発案者など、詳しく見ていきたいと思います。
では始めましょう!
Q 寿司はいつどこで生まれたのでしょうか?
お寿司の発祥は、東南アジアに古くから伝承された「熟鮓(なれずし)」と呼ばれた発酵食品が起源と言われています。
温暖な国、東南アジア。特に山岳地方では、魚は入手困難な貴重品でした。そこで魚を長期保存するための方法として編み出されたのが、魚を発酵させて保存するという「熟鮓(なれずし)」という手法。
この「熟鮓(なれずし)」が中国を経て、奈良時代には貢物として朝廷へ献上されていたといいます。
現在、滋賀県の琵琶湖付近で作られている鮒寿司は、この「熟鮓(なれずし)」が起源とも言われています。
Q 寿司の語源を教えて下さい。
寿司の語源は、「すっぱい」を意味する形容詞「酸し(すし)」の終止形と言われています。
このあたりは諸説あり、酢を混ぜた飯=「酢飯」の「め」が抜け落ちて、「すし」になったとする説もあるそう。
いずれにせよ、「すっぱい食べ物」から語源が来ているようではありますが、現在、寿司に広く使われている「すっぱい」酢飯と違い、「鮓」は魚と塩と米で乳酸発酵させた食品ということのようです。
Q 寿司を表す漢字について教えて下さい。
寿司を表す漢字はいろいろあります。
「鮓」
「鮨」
「寿司」
それぞれどういう歴史があるのか、使い分けがあるのか、気になりますよね。
まず、「鮓」ですが、こちらが寿司を表す漢字として最も適切な字と言われています。というのも、この記事の最初、「お寿司の発祥」のところで書いたように、お寿司は東南アジアに古くから伝承された「熟鮓(なれずし)」と呼ばれた発酵食品が起源というのが有力。この「熟鮓(なれずし)」のすしのところ、「鮓」の漢字が当てられていますよね。
そして「鮨」ですが、こちらはもともと中国で「魚の塩辛」を意味する文字だそうです。日本では「鮓」の持つ意味と混同され、同じ意味で使われてきました。
「鮨」は江戸前系のすしに用いられることが多く、大阪では「鮓」が用いられることが多いそうです。
現代で多く使われる「寿司」は、江戸末期に作られた当て字です。「寿を司る」や「寿詞」から縁起の良い言葉を当て字として使っていて、これは、朝廷に差し出す献上物の一つがすしであったことから、縁起の良い言葉を使用したと言い伝えられています。
ちなみに、現在はイラストの「ハンバーグ寿司」のように、魚以外がネタになるお寿司はたくさんあります。その場合、「鮓」や「鮨」は漢字に「さかなへん」が使われていることから魚以外がネタのすしには都合が悪い場面もあるようで、そういう意味でも、「寿司」は当て字であるため使いやすく、どんなお寿司にも広く使われています。
Q 寿司の歴史と変遷について教えて下さい。
東南アジアに古くから伝承された「熟鮓(なれずし)」と呼ばれた発酵食品が起源のお寿司。奈良時代には朝廷に献上する貢物になっていたようですが、現在のようなスタイルに近づいたのは江戸時代とされています。
江戸時代中期(1700年代前半頃)には、現在のお寿司の原型となるお酢を使った「早ずし」が誕生しました。「早ずし」は、飯にお酢と塩で味付けしたもので、発酵する必要がありませんから、待たずにすぐお寿司を食べられようになったというわけです。
それ以降、「箱寿司」や「巻き寿司」、「棒寿司」など、今でも食されているいろんなお寿司が作られるようになったそうです。
そしていよいよ江戸時代後期、1800年代前半頃「握り寿司」が江戸の街で誕生しました。当時の「握り寿司」はおむすび並みの大きさで、
現在の2倍から3倍も大きかったようです。その大きな「握り寿司」を切り分けて食べるスタイルから、現在の一皿2貫の名残と言われています。
ちなみに値段は、1つ4文(120円)から8文(240円)で、卵巻き16文(480円)が一番高いネタだったそうです。
では、「握り寿司」を最初に握った人物はわかっているのでしょうか?
諸説ありますが、「握り寿司」の発案者は、江戸両国の「与兵衛寿司」の華屋与兵衛(はなやよへい)とか、江戸深川・安宅六軒堀(あたけろっけんぼり)の「松のすし」の堺屋松五郎とか言われています。
いずれにせよ、この後、江戸から全国へと人気が広がり今につながるわけですから、「握り寿司」の発案者には感謝しないといけませんね。
ご清聴ありがとうございました。
第2話は、「お寿司と日本語」の謎について迫ります!